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|---|---|---|---|---|---|
019c973d-bae4-7871-bf56-a652d2687d9b | もしも憧れの世界に来たらどうする?
日本男児なら一度はあの世界に行きたいと思うようなゲームをプレイしたことはあるだろう。
少なくとも俺には合った。
それがKnight of the Giantの世界だ。
じゃあ実際そうなったらどうなるか。
答えはこうだ。
「……はぁ?」
開いた口が塞がらない。
窓から見える光景をしばらく眺めることしかできない。
いまだ現実が信じられない、これは夢なのかと何度も頬をつねるが痛みしかない。
「まじ? 嘘だろ、え? ほんとに?」
フルダイブ? どっきり? 催眠?
あらゆる可能性でその光景を否定しようとする。
しかし。
「現実だよな」
目が、鼻が、耳が。
あらゆる感覚が、... | ja | 2,629 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bae6-7d33-89d6-3b539cda0e45 | この国は支配されている。
アースガルズ帝国という世界の半分近くを占める大国の帝国。
つまりは貴族が存在し皇族が存在し、皇帝がいる帝国だ。
時代背景をはっきり覚えているわけではないが、電光石火のごとく日本は占領された。
日本の自衛隊は世界トップレベル。
しかしそれは現実世界での話、この世界ではKOGがある。
戦車? そんなものKOGの前では相手にならない。
空を飛ぶ巨人の騎士の侵略能力は計り知れない。
無差別虐殺の戦略兵器ではなく、戦術兵器であるKOGはやはり格別の侵略兵器なのだろう。
侵略された日本。
それはすでに過去ではあるのだが、その結果この国では日本という名前が奪われアースガルズ帝国の植民地となった。... | ja | 2,626 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bae8-7fa3-a76d-4250724adb80 | **********
以下
シュミレーター→シミュレーター
直すの大変なので、気になるかと思いますが大目に見てください
**********
現れたのが銀色の輝く腰まで伸びた髪をなびかせる少女。
「レイナ……」
剣也はその姿に目を奪われる。
「レイナ・シルフィード」
かぐやはまるで親の仇のように見つめる。
この国の軍事のトップの娘であるレイナ・シルフィードを。
彼女は、意図せず剣也の席の隣に座る。
たまたま空いていただけの席ではあるが。
剣也は彼女の方を向く。
「お、おい。あいつ話しかけるつもりか?」
「あの髪2級だろ?」
レイナもその様子に気づいたのかこちらを向いた。
吸い寄せられるような蒼い瞳... | ja | 2,370 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-baeb-7428-b4de-796c069200c6 | 二人が乗り込む。
「マニュアル通りね。必死で読み込んだ。私ならやれる! 頑張れ、私!」
かぐやは自分を鼓舞する。
シュミレーターは今日が初めてだ。
そもそもKOGには年齢制限があり高校生つまり15歳からしか乗れないことになっている。
幼過ぎるとそもそも足が届かないし、操作できない。
KOGが危険だという事もあるのだが、そもそも軍人になれるのが15歳だからだ。
アーズガルドでは15から成人として扱われる。
「ふふ、楽しみだね。悔しそうに涙を流す顔を見るのは大好きだよ」
「二人とも準備はいいな。では」
二人の画面の前にはカウントダウンが現れる。
3,2,1…Fight!
「はじめ!」
(頑張れ! かぐや!)
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019c973d-baed-7d3a-8f38-c1fbe7d668fa | 俺は中学の頃虐められた。
親がいないというしょうもない理由で。
今思えば理由なんてどうでも良くて俺の態度のせいなんだろう。
高校に上がった時、俺と同じように虐められている奴をがいた。
どうしてだろう。
高校では静かに過ごそうと思っていたのに。
誰にもにらまれないように。
どうしてだろう。
身体が勝手に動いてしまったのは。
わからない。
しょうもない正義感だったのか。
力を持つ奴に力のない奴が歯向かったらどうなるか結果は見えていたのに。
その結果標的が自分に向かうことぐらいわかっていたのに。
…
「よし、操作方法はほとんど同じだな」
剣也はシュミレーターに乗り込んだ。
マニュアルを流し読みしていた... | ja | 2,886 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-baef-782e-bb5f-c2f81ed6afb7 | 「私と戦いなさい、御剣剣也」
「メリットは?」
剣也はにやにやと笑いかける。
少しからかってやろう、そんな安易な気持ちで。
コミニケーションのつもりで。
「ゲスが。私に土下座でもさせたいのですか? あなたの性癖は歪んでいるようですね」
(あ、やべ。調子乗りすぎた)
ただでさえゴミを見るような目が、汚いゴミを見る目に変わった。
ゾクゾクするけど、今は好感度を上げなくては。
「そんなことは思ってないよ! あーそうだ! じゃあ剣也君と呼んでくれないか?」
作中では、君付けで呼んでくれていた。
ならばこの世界でもそうしてほしい。
それを聞いたレイナが少し驚く。
「?……いいでしょう。それが望みですか? 理解できませんね... | ja | 2,228 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-baf1-7a14-bbb4-5154f81bda0c | (剣也君いただきましたぁぁ!!!)
剣也は心の中で叫び、小さくガッツポーズをする。
内心嫌われるんじゃないかとドキドキしていたが、何とか認めてもらえるボーダーラインぎりぎりだったようだ。
そして試験は終了した。
結局日本人達は剣也以外すべて負けたが皆大きな声で敗北を宣言した。
その声は胸を張っており、卑下するような気持ちはどこにも感じなかった。
負けたのは確かに悔しい。
それでも剣也が勝利したことで一泡吹かされたアースガルズ人を見れただけ気分がよかった。
まるで自分のことのように喜んでくれる日本人達に剣也は照れながらも笑みを返す。
前の世界では、ボッチまっしぐらだったがこの世界では少し違うみたいだ。
試験が終... | ja | 2,479 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-baf3-7cfb-923b-5420d091af09 | まず状況を整理しよう。
剣也は現状を分析する。
黒神かぐや。
俺の推しヒロイン、嫁にしたい。
確か実はエッチな子だった、誰よりも異性に強い意識を持っているゆえのツンデレ。
「かぐやはレジスタンスの一員だったはず……どうにかして仲間になろう」
彼女を守るために仲間になる。
レジスタンスをやめろとは今日の仕打ちを見てとても言えなかった。
日本を取り戻さなければかぐやの幸せは来ないだろう。
「そしてレイナだが……」
レイナ・シルフィード。
俺の推しヒロイン、嫁にしたい。
クールキャラでついぞ俺のやっていたゲームではデレることはなかったが、誰よりもまじめでKOGに強い思い入れがある。
今日の感じからしてある程度仲良く... | ja | 2,410 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-baf8-721f-a326-0cb20bbca730 | 「殺すわよ」
彼女はごみを見る目でそういった。
「冗談です、殺さないで」
「剣也って変わってるわね、私みたいなののどこがいいのか…」
そういってかぐやは手を胸に当てる。
設定では胸が小さいのがコンプレックスとかいうテンプレ少女だったはずだ。
だから俺は決め顔でこういった。
「貧乳はステータスだ。俺は好きだよ、ちっぱいも」
どうだ、コンプレックスを優しくカバーするできる男。
この包容力にかぐやも……あれ? かぐやさん?
そこには照れて赤くなる可愛い少女などいなかった。
火山のように、燃えるマグマのように、わなわなと振るわせていた。
御剣剣也 16歳。
彼女いない歴=年齢、女性の扱いは偏った知識のみ。
な... | ja | 3,013 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bafa-7754-9e1a-01d13986ec7d | 「それから私は誓ったわ。あの国に復讐するって」
「そんなことが」
剣也は知らなかった。
彼女がレジスタンスであることは知っていても、なぜレジスタンスなのか。
彼女がどんな過去を持ち、生きてきたのかは知らない。
そのあまりに悲惨な。
まるで物語の中のような出来事に言葉が出なかった。
でもきっと本当にあったことで、元居た世界でも少し前ならよくあった話で。
「じゃあ、かぐやは」
「ええ、私はレジスタンス。日本最大のレジスタンスグループ。アマテラスの一員よ。軍には潜入しているだけ」
「……」
「驚いた? ごめんなさい。話すつもりはなかったけど……あなたは何か違う気がしたから…」
するとかぐやが立ち上がる。
「カレー美... | ja | 2,941 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bafd-7c54-9e4a-6ba824c9eaee | 「ほらほら! 朝だよ! みんな布団たたんでご飯の準備だ!」
食堂のおばちゃん、もといよしえおばさんがフライパンとお玉という凄い昭和を感じさせる起こし方で子供たちを起こした。
訓練された軍人のようにてきぱきと布団を片付ける子供たち。
あっという間に机の上にご飯が並んでいく。
ご飯とみそ汁、卵焼きと海苔。
質素な食事で、量も少ない、しかしとても温かい。
「さぁ、みんなで。いただきます!」
「「いただきまーす!」」
「賑やかな食事だな」
「そうね、朝は毎日戦いよ」
かぐやと剣也は子供たちが暴れまわる中、食事を食べる。
ここにいる全員が親がいない。
なのにこんなに元気に走り回る、親がいないのにこんなに元気に耐えている... | ja | 2,510 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-baff-7e62-bfbf-ca101f102afb | 「剣也君はここで待機、相手のKOGが出た場合戦闘を開始してくれ」
「わかりました」
基本的には輸送船の占拠を一心達で行う。
白兵戦なら練度の高い一心達が、ただの輸送船の見張りになど負けることはない。
しかしKOGが出てきた場合は戦況が一変する。
そのための剣也、そのためのKOG。
…
「はじまったんだな……」
心臓の音を身近に感じ、今まさに戦場にいることを理解する。
まさか自分が命のやり取りを行うとは思ってもいなかったが。
「銃声……人が死んでるのか」
実感はない。
しかし銃声が聞こえてくる。
つまりは人が死んでいる。
もしかしたら今日握手した誰かかもしれないし、一心さんかもしれない。
その事実をなんとな... | ja | 2,555 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb03-71ff-ab15-c39bb07ab6fc | 「はい…えぇ、レジスタンスかと思われますが、調査中です」
腰に大剣を刺した30代後半の筋肉質な男。
ひげは綺麗に整えられて武術の心得も持つ。
軍人というものを体現したかのような男、軍神と呼ばれ名をジーク・シルフィード。
そのジークが映像の前で報告を行っていた。
「軍神ともあろうものが、なにを手間取っている。十機だぞ、いくらすると思っている!」
通信相手は本国の軍トップ。
「ロード様指揮のもと、レジスタンスの殲滅作戦を実施いたします」
「へぇ、面白そう。私もいこっと」
通信の先には一人の女性。
金色の腰まで伸びた長い髪。
一見すると、とても美しいお姫様を体現したかのような女性。
しかしその報告を聞いたジークは... | ja | 2,005 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb07-7a6f-88aa-3d06450099f0 | 「お父さんってどんな人?」
「パパは、強い人です、あと厳しいです」
レイナの話を聞くとKOGをレイナに教えたのはジーク・シルフィード。
幼き頃から教養を学び、体術を学び、そして15歳になってすぐKOGを教えた。
そのかいあってか、同年代ではレイナは最強レベル。
だから最前線とはいえこの島国にレイナより強い存在がいるとは思っていなかったのに。
「で、俺が目をつけられたわけね、それにしてもみられるな」
レイナと二人で歩いていると1級アースガルズ民にすごく見られる。
じろじろと、にやにやといやらしい顔でレイナと剣也を交互に見られる。
「そうですね、もしかしたら性処理用の従者と思っているのかもしれません」
「ふーん…... | ja | 1,639 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb0a-70bd-bf80-759be12016fb | 「さて、どれぐらい強いんだろうか、俺の力はこの世界ではどこまで…」
油断はしない、最初からフルスロットルで迎え撃つ。
KOG専用装備の剣を構えて迎え撃つ。
それ目掛けてジークが間合いを詰めて切り込んだ。
一挙手一投足すべてが洗練されており無駄がない。
だからこそ。
「ふふ、これは……驚いたな」
ジークの一撃を受け止める剣也。
はじき返したかと思うと、反撃の一撃まで入れる。
分かっているからこそ読み合える。
「さすがは軍神ですね」
「簡単に止めておいてよく言う」
(強い、プロレベル。いや、これなら世界大会の上位陣並みだぞ!?)
日常的にランク戦で相手をしている日本サーバのマスター達にも決して劣らない。
むし... | ja | 2,455 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb0c-7962-8214-e6dfe9a17ca2 | 「建御雷神? なにをいってるんだい?」
「え!? あぁ、すみません! なんでもありません」
田中が訝しげに剣也を見るが、慌てて訂正する剣也。
ついぽろっと前の世界の名前で呼んでしまったが、この世界も同じ名前なのだろうか。
「…まぁいいか。まだこの機体の名前はなくてね、というか動作確認もまだなんだ。それで優秀なエース級のパイロットをと思ったんだがそのレベルのパイロットは簡単には捕まらなくてね」
「少なくとも聖騎士クラス、レイナ並みには使えなくてはこの特別機は使いこなせないスペックだ」
田中とジークの話では、高スペックの特別機を作ろうとあらゆる最新技術を入れに入れた結果。
余りに早く動くため立つだけでも苦労するピーキーな性... | ja | 1,923 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb0e-7aa9-9a6b-f75bef811742 | 「で? ゴミ共の場所は?」
「……いくつか候補がありますが、ただのスラムかどうかは判別できておりません」
会議室で作戦を立案するジーク達とユミル。
「じゃあ、そのスラムのゴミ掃除ね、そしたら最後にはあぶり出せるでしょ。はい、作戦会議終了」
ユミルの側近の一人のアースガルズ帝国民へ命令する。
ジリアンと呼ばれるユミル親衛隊の隊長、帝国への忠義に生きるジークと同列の聖騎士長だった。
まだ年は若く眼鏡をかけている身長の高い男。
まじめを絵にかいたような、それでいて帝国の聖騎士長に選ばれた若き才能。
(彼がジリアンか……才能はあると聞いているが聖騎士クラス。ユミルの騎士に聖騎士長達が誰もなりたがらなかったから繰り上げさ... | ja | 2,277 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb10-7971-9855-b8d180d3fb1f | 「じゃあ、ジリアン。開戦しましょうか」
「はっ!」
山の上に10体を超えるKOG。
戦争するには心もとないが、レジスタンスを殲滅するには十分な戦力が整う。
彼らはユミル親衛隊。
皇族だけが持つ親衛隊という私兵の軍団。
そして先頭には、若輩とはいえ帝国が誇る聖騎士長の一人ジリアンが立つ。
するとユミルが乗るKOGからあたりに響く巨大な声が響く。
KOGの拡声器によって見下ろすスラムへ声を届ける。
「えー、テステス」
「なんだ?」
「拡声器?」
眼下に見下ろすスラムの住民たちが顔を上げる。
突然流れる巨大な音声に耳を傾けた。
彼らは3級国民になれず、日本を捨てきれなかったはぐれ者。
かぐやの家族でもあり、剣... | ja | 1,993 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb12-79fb-bce2-2b5838b062de | 「はぁはぁはぁ」
剣也とかぐやがスラムの端に到着した。
「うそ…うそ!!」
かぐやの目に映るのは血みどろの死体達。
瓦礫に押しつぶされた人だったもの。
原型をとどめていないものも多い。
その光景をみた剣也は立ち尽くして声が出なかった。
「なんだよ、これ」
こんな光景見たことがない。
死体はネットでモザイクがかかったものぐらいは見たことがあるがそれでも気持ち悪かった。
でも今目の前にある光景は、あまりに鮮明で。
あまりに赤く、あまりにリアルで。
「オェェェ!」
火薬の匂い、硝煙の匂い。
その鼻孔を貫く死の匂いに剣也は吐いた。
今まで陽気に笑ってくれたおばさん、強面なのに毎日おはようといってくれるおじさ... | ja | 2,644 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb15-76af-8b57-764b91648481 | 「姉上が当たりを引いたか。まったくこういうところでは勝ち目がないな」
他二つのスラムを制圧したロード。
しかし死人は出ていない。
丁寧に、そして無意味な殺戮を行わずレジスタンスの存在を調査。
そしてスラムの人間達を確保し、3級国民として扱うように命令を下す。
抵抗力のないスラムの人間達は、なすすべなくアースガルズ軍人に連れていかれることとなる。
あまりに迅速過ぎてスラムの人々には何が起きているかすら理解できなかった。
「では、行こうか。私達も」
その最悪の敵が進軍を始める。
常勝の指揮官、世界の支配者。
彼の前に敗戦はなく、ただの一度の敗北もない。
EUを壊滅寸前まで追い込んだ天才。
アースガル... | ja | 2,081 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb19-77a6-ba1f-3a9b81da77f6 | 「ロード様!?」
「ジーク、レジスタンスに打たれたことにして処分しろ」
ジークは驚きすぎて動けなくなっていた。
実の姉を足蹴にして、命令するその少年に恐怖すら覚えた。
「これを知るのは君と私だけだ。わかっているよ、君がこの国に特別な思い入れがあることを」
「!?……なぜそれを」
「少しだけ調べさせてもらった、悪く思うな。だから君も嫌いだっただろ? そのゴミのような女を。人間をゴミのように殺すこれを」
同じ皇族とはいえ、実の姉をゴミと罵るその目は間違いなく本当にゴミを見るような目をしていた。
「……わかりました。このことは墓場まで持っていきます」
仮に暴露したところでロードが相手では握りつぶされてなかったことにさ... | ja | 2,125 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb1c-74a8-b73a-0c633b0c3f23 | 「ロード様、布陣はいかがいたしましょうか」
地図が移されたモニターを眺めるロードに軍人が聞く。
ロードの意思を全体に伝えるだけの形式上の指揮官である彼は名を『アルゴ』という。
年は40前後の立派な髭を生やした文官。
ロードの戦場には常に彼がロードの意思を全体に伝える。
それは彼が優秀な指揮官であることも意味するのだが、本人の強い希望あってのことだった。
彼は喜びで震えていた。
皇族に仕えることは帝国では最大級の名誉ある仕事と呼ばれる。
しかし彼はそんなに信心深くはない。
もちろん帝国への忠義はあるが、それよりも彼の心を動かすものはロードへの妄信とも呼べる信仰。
(あぁ、久しく見ることができなかったロード様の戦をまた... | ja | 2,390 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb1e-779a-b454-ecb4a0463955 | 「一心さん! 俺が何とかこじ開けます!」
KOGに乗る剣也が一心に伝える。
一点突破を試みた剣也達の前には30近いKOGが待機していた。
ここはロードのマップでいうところのポイントE。
30のKOGとは、戦局を覆す能力のある大部隊、一つの都市を落とすことすらできる戦力だった。
…
「私も出たほうがいいでしょうか」
「いや、お前は残れ、先ほどの戦闘で疲労しているだろう」
ジークとレイナが画面越しに戦場を見る。
レイナは出撃できますとロードに進言するが、ジークに否定される。
横から見ても疲労で立っているのがやっとの状態。
それほどの死闘を行ったということ。
「そうだね、戦力的には十分すぎる。唯一の懸念は、ジリアンを倒... | ja | 2,333 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb22-7e90-a754-2cd7ba1e96ac | 「やっと沈黙したか…」
戦闘の一部始終を見て居たロードが立ち上がる。
「ジリアン、それに娘では相手にならないはずです。全盛期の私ですら勝てない」
その戦いを映像で見ていたジークとレイナが声を漏らす。
しかしレイナだけは、疑問をずっと浮かべている。
(まるで剣也君のようでした……レジスタンス…日本人…まさか!)
その時レイナは気づいた。
毎日のように戦ってきたレイナには、剣也の癖も戦い方もみるだけでなんとなくわかったから。
「でも、これでエネルギー切れだ。あれほどの戦闘技術、惜しい人材だが……あの戦いぶりでは寝返ってくれるのは期待できないかな」
(それに、あの戦い方どこかで見た気がする…)
ロードは戦術には疎い... | ja | 1,812 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb25-7ee9-b284-e1778001646b | 「なんだ? あの白い機体は……」
「騎士長、撃ってもいいんですか?」
「あぁ、ロード様から討伐しろとのご命令だ」
(しかしあれほど取り乱すロード様は初めてだな、何かまずいあの機体は)
「よし、お前ら! やることは同じだ! 弾幕を張れ!」
「了解!」
騎士長の指示は的確だった。
遠距離からの弾幕、ここに技術的な差は生まれない。
いかにバカげた戦闘技術があろうと、この銃弾の嵐の前では意味をなさない。
それは先ほど剣也自身が実感している。
普通の機体なら、それだけで完封できた。
普通の機体なら。
「構え! 撃…!?」
直後、その白い機体の前に三角錐状の盾が出現する。
まるで槍のような、その盾のままこちらへ突撃... | ja | 2,659 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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まえがき
第二章開幕。
基本的に毎日12時02分に投稿していきます。
今後ともよろしくお願いします!
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「剣也君? 剣也君?」
声が聞こえる、誰だろう。
俺はなにをしていたんだろう。
俺は守れたんだろうか……。
剣也はゆっくりと目を開く。
見慣れた景色、コクピットの中。
ぼやけた視界がゆっくりと鮮明になっていき、白い光が眩しくなっていく。
「あれ? 俺」
「剣也君、よかった……大... | ja | 2,170 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb29-79b4-a8f8-d2b98c34f498 | 「すべてわかっています。剣也君。それを踏まえて私を信じてくれませんか?」
レイナの話は要領を得なかった。
しかし今こちらへ向かっている。
どうか敵対せずに話を聞いてほしいとのことだった。
「そっか……ごめん。黙ってて、俺はレジスタンスとして活動していたんだ」
「いいえ、いいんです。でも私達は敵だったんですね。あなたとシュミレーターではなく、現実で戦うとは思いませんでしたが」
「…ごめん」
「あなたと話したいという方がいます。今パパとを含めて3人で向かっています」
「……」
「御剣か? 私だ。ジークだ」
「ジークさん……すみません、裏切るような形で」
「……そうか、安心したよ。君は君のままなんだな。性格まで偽られて... | ja | 1,477 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb2b-756c-af60-94e3311aced0 | 「ロ、ロード様!?」
「敵国の代表を様付けで呼んでいいのかい? 剣也君」
まるで自然に、警戒心すら抱きづらい。
本来なら、すぐにでも銃を構えて、建御雷神に乗るべきところ。
なのに、あまりの自然な状況に剣也は動けなかった。
「大丈夫。戦う気はない。警戒を解いてくれ、信じられないだろうが」
「先ほどまで殺し合いをしていたのに信じろと?」
「君をもし殺す気なら、もうすでに打ち抜いているよ。スナイパーでも待機させてね。戦場での君はまさに無敵だと思ったが、今は生身なのだから」
ロードが微笑む。
確かに不用意に降りてきた剣也を打ち抜くぐらいは簡単だったろう。
レイナにできるとは思えないが、お願いされればホイホイ降りてきたことが簡... | ja | 3,318 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb2e-7021-a43c-f2496f8e1c14 | 「君を見つけたんだ。剣也君」
ロードが真っすぐと剣也を見る。
「俺?」
「あぁ、本国の聖騎士長にも勝るその操作技術、私は君ほど強い騎士を見たことがない。まさか100対1でねじ伏せられるとは。なぁ、ジーク」
「はい、御剣はすでに世界最強の一角かと……アジア連合の白蓮、EUのトール。今、世界最強と呼ばれる者達と比べても遜色ない、もちろんジリアンや、引退した私とは別格の本当の聖騎士長達、三英傑と比べても。いや、むしろ彼はそれよりも」
「そう…だから剣也君」
ロードが立ちあがり剣也に右手を差し出す。
「私の騎士になってくれないか、そして私が皇帝になる助けになってくれ。世界をよりよくするために。
君にはその志があり、それを為... | ja | 2,271 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb32-7dc3-a54c-4dae783b6a3b | 「レ、レイナ!?」
「パパから剣也君のお世話をしてあげてくれと頼まれています。背中流しますね」
混乱する剣也、目の前には先ほど裸体を妄想していた少女。
残念ながら軍服を着ているが、どうせならバスタオル一枚とかがよかった。
「ってちがーう!! レイナ!? どうして?」
「パパはいつも、疲れた時は背中を流してくれと頼みますよ? 昨日はお疲れだったので……」
(あのおっさん、高校生になる娘に何やらしてんだ)
とたんにジークがただのすけべ親父に思えてきた。
厳格な軍人だと思ったのに、なんて奴だ。全くうらやましい。
「じゃあ、背中を向けてください」
半ば強引に座らされる剣也。
抵抗できないのは、少し期待してしまっているか... | ja | 2,268 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb35-703e-97d3-7337c5cdc041 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
まえがき
コメント書いていただけている皆様!
全部読ませていただいてます。
面白いコメントもたくさんありがとうございます!
返信ができていないこと、申し訳ありません……。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「レイナが好きなのか? 本気で」
「え? いきなりなんですか?」
冗談かと思ったがジークの目を見て本気で聞いていると理解した。
だから剣也も改まって座りなおしジークに返す。
「はい、好きです。本気で」
しばらく静寂が二人を包む。
真剣な空気、なぜジークがそんなことを切り出したのかはわからない。
「どれぐらい好きだ」
まるで、私のこ... | ja | 2,151 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb37-707c-b7fc-bef68ede92b1 | 「一緒に!?」
「あぁ、レイナ君にはソードの護衛、そして同時に聖騎士も目指してもらう。そのため共に過ごしてもらいたい」
「わかりました」
「わかっちゃうの!? いいの!?」
「くっ! ロード様の命令でなければ!」
なぜかジークが悔しそうな顔をする。
くっころのおっさん騎士なんか見たくない。
先ほどジークが聞いてきた理由はこれかと剣也は理解する。
レイナは案外すんなり受け入れてくれている、心なしか少し嬉しそうにすら見える。
「とりあえず当面の目標を整理しようか。今日からソード、レイナはアースガルズ帝国へ向かえ。飛行船は手配した。ジークは、この国の軍部の代表として残る必要がある。田中君は建御雷神と共に海を渡れ。船はジー... | ja | 2,326 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb3e-7f0c-b265-b00e906beae6 | 「おいおい、可愛いからってさすがにそれは許せねーな!」
「俺達これでも聖騎士だよ? 年に20人ぐらいしかなれない帝国最強の騎士よ?」
「レイナちゃんこれは落とし前つけてもらわないと、お兄さん達許さないよ?」
「勝ってから言ってください」
「「はぁ!?」」
(煽り性能たけぇーー無自覚って怖い)
無意識に敵を煽るレイナ。
本人としては思ったことを言っているだけなのだろうが。
それにチャラい見た目のわりに3人は間違いなく聖騎士。
正直やられる前のモブとしか思えないが。
この世界での聖騎士の立ち位置があまり剣也は理解できていなかったが、先ほどの話だと年に10人というと全部で200~400人ほどがいるのだろう。
つまり前... | ja | 1,765 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb40-7b2b-b56c-bf00052f5b25 | 「聖騎士長のジン・ハルバートだ。よろしく」
「聖騎士長……」
それを聞いたレイナも動揺が隠せない。
聖騎士長とは、本来歴戦の騎士。
もちろん実力があればなれるし、ジリアンのように聖騎士相当の実力で聖騎士長にされた者もいる。
「スター大佐。なぜ聖騎士長がこんなところに?」
剣也も驚き、大佐に聞く。
聖騎士長がなぜ学生をしているんだと。
「彼は学生だ。ただし出自が特殊で英才教育というやつだな。今年聖騎士長になり、最年少聖騎士長となった……が、学校はきちんと卒業したいといってな。なんならもう儂より偉いんだが」
スター大佐の話だと、聖騎士で大佐と同程度の権力を持つらしい。
聖騎士長だと中将となるので、圧倒的に軍内での権力は... | ja | 1,793 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
まえがき
面白いという一言だけでとても執筆の気分が乗ります。
いつも書いてくれている方ありがとうございます。
皆さんのおかげでストックも20話ぐらい溜まりました。
くすっと笑ってしまうコメントもたくさん嬉しいです。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「ロード!?」
剣也が驚き名前を呼ぶ。
ロード・アースガルズ、この国の支配者の一族の登場に。
「ソード?」
その発言にロードが微笑む。
その威圧する笑顔に、剣也ははっとなり言い直す。
「さ、様……」
「はは、さっそくやらかしているようだね、ソード。この様子だと全員倒してしまったのかな? みんな楽にし... | ja | 2,124 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb49-7497-a7e8-f8b93816abc9 | 「今日は悲しい知らせをしなければならない」
オーディン・アースガルズが立つその演説台。
そしてそのよく通る声は不思議と安心感を与えていた。
オーディンは、静観な顔立ちと鍛え上げられた肉体。
見ているだけで、好感を持ってしまう。
そういったカリスマ、オーラとでもいえるものを放っていた。
支配者として自覚し、相応しい才覚を有し、それを為すだけの意思を持つ。
そして彼の目の前には多くの軍人達。いわゆる桜という奴だろうか。
オーディンの一挙手一投足に歓声を上げて映像を盛りあげる。
(演説は支配者には必須の力だというけど……)
前の世界では、ドイツの独裁者が演説の力で成り上がった歴史がある。
メディアが力を持つ世界におい... | ja | 1,791 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb4e-7d61-9a1e-78c672f00ebd | 「オーディン様、南部地方の町フィンでの紛争地帯のことでご相談があるのですが……」
「あぁ、まだ降伏しないのか」
「はい、いかがいたしましょう。私に任せていただければ…」
オーディンは椅子にもたれて手を組む。
ここは、オーディンの執務室。
つまり軍事最高司令の部屋、その後ろから差し込む光を背に考え込むように手を組んだ第一王子。
「いや。父上が病に伏せてからレジスタンスの動きが活発すぎる。もう一度教えておかなくてはな……この世界の支配者は誰なのか、お前達はどういう立ち位置なのか」
秘書の美しい女性から尋ねられたオーディンは思案する。
美しいのに、その見た目はどこか意地悪なイメージを感じさせる妖艶な美女。
名をキャサリンとい... | ja | 2,110 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb52-77b6-9b27-4233859b364b | 「将軍! 正気ですか!?」
「あぁ、だがこの作戦に穴があるか?」
翌日の作戦会議でダニエルは、その作戦を発表する。
その狂気にまみれた悪魔の発想の作戦を。
「穴しかないでしょ! 国境を越えさせるなんて……だって……だって」
しかし言葉が続かない。
他の作戦会議に出ている部隊を操る名将達も粗さがしに夢中になる。
「ないんだ、これには。このいかれた一見穴だらけの発想には無いんだよ、明確な穴が」
「しかし国境を通すなんて、危なすぎます! ここを超えられれば…」
「だが、あと三日ともたんぞ。守っていても死ぬだけだ」
「そ、それはそうですが……」
「ならばやるべきだ、死にゆく身体を必死に守ってどうする。死ぬとしても戦って... | ja | 2,670 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb54-741f-b1fb-aff4ef9c95a9 | 燃える国境、死んでいく大人。
壊れたEUのKOGの残骸達。
一切の抵抗を許さない力の塊が蹂躙した。
作戦などあったものではない、圧倒的物量と技術と力で電光石火で攻略される。
避難する間もなく、敵影が見えたと思ったら数時間で基地は落とされた。
「ここまでか……」
既に囲まれている基地の作戦指令室でつぶやいたのはダニエル。
重苦しい空気が漂い、ロードも黙る。
ロードは、今まで遊び感覚でここにいた。
戦うということを理解するにはまだ彼は幼過ぎた。
しかし今日今何が起きているかを真に理解し、戦争というものを徐々に理解していく。
「おじさん……」
「すまない、ロード。お前はよくやってくれた」
だからみんなを救える方法は... | ja | 2,683 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb57-7062-973a-e6d3c3101429 | 「あとはわかるだろう、私が何をなしてEUがどうなったか」
「……そんなことが……でも、でもお母さんは! ロードの親は助かったんだろ?」
「……いや、死んだよ。私はね……何も、本当に何にもわかっていなかったんだ」
◇再度過去
「私が来なかったら死んでいたな、ジーク」
巨大な車の指令室。
ここはEU大戦の最前線、ジークとロードが戦場で相まみえる。
すでにロードは、皇族としての風格が付き、ロードはジークを認めている。
過去、叔父を殺したジークをかつては恨んだ。
しかし戦場にでて、恨むべきは戦争であり軍人ではないという事をロードは知る。
彼らは命令に従うことしかできないのだから。
職業軍人というものを理解したロードは、ジ... | ja | 2,872 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb59-7d88-abb8-c4d04d04195f | 「いよいよ明日は聖騎士試験、ですね。お兄ちゃん」
「もうレイナもお兄ちゃんって呼ぶのに慣れてきたな」
夕飯を一緒に食べる剣也とレイナ。
もう慣れたもんで、半年近くを一緒に過ごした。
「レイナ」
「はい」
「ありがと」
食事の時は何も言わずに欲しているものを取ってくれる。
剣也が何を欲しているか、この食材にはなにをかけるかがレイナにはわかる。
まるでカップルのようだと剣也は思ったが、こういったこと以外この同棲生活でむふふなことは一度たりとも起きなかった。
「ふぅ、美味しかった。ご馳走様でした」
「お兄ちゃんは、綺麗に食べてくれるから作り甲斐がありますね」
皿を片付けていくレイナ。
それを見て剣也がふと思ったこと... | ja | 2,013 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb5b-7d7e-9e2b-fed4f8e597c1 | ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
まえがき(今日更新分の1/2です)
GW記念でしばらく二話ずつ更新します。
読み飛ばさないようにしてください。
前回二話更新したとき、読み飛ばされている方が
5000名ほどいらっしゃいますので……
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「お、おはよう……レイナ」
今朝もいつも通り起きる剣也。
「お、おはようございます!!」
上ずった声でレイナが剣也におはようと返してくれる。
いつもの日常、しかし完全に昨日の出来事を引きずっていた。
ぎこちない二人が朝食をとる。
しかしレイナの方が、はっきりとおかしくなっていた。
「レイナ……今日は」
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前書き
すみません。
やっぱりどうしても読み飛ばしが発生してしまうので二話更新はやめておきます。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「息子が世話になっているね。私はオシリス・ハルバードだ」
「は、初めまして! ソード・シルフィードです!」
「うむ、座り給え」
そして着席を促された剣也はその椅子へと座る。
「お前がジークの息子か! あのアホは元気か? がはは!」
体が剣也の三倍ぐらいありそうな、まるでゴリラのようなおっさん。
特徴は声がデカい、体がデカい、名前はオルグ・オベリスクというらしい。
話し方から... | ja | 2,266 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb67-7da8-a561-a050b4300538 | 「なんでもします。剣也君が喜ぶなら……私にできることはありませんか?」
(え? エッチな感じでもいい感じですか?)
一瞬剣也を煩悩が支配する。
しかし理性が現れて、その煩悩を抑え込む。
理性は煩悩と戦い始めたが、今日は理性のほうが優勢のようだ。
これも数多の死線をくぐってきたおかげだな。
「いいですよ? なんでも。お兄ちゃんが望むなら」
ボンッ!
理性は死んだ。
「あ、そうだ。剣也君何が好きですか?」
「レイナが好きです!」
「あ、え……それは……あ、ありがとうございます。じゃ、じゃなくて! 食べ物です」
テンションが上がってしまった剣也はアホになってしまった。
理性は死んだから仕方ないね。
「あ、ごめん。... | ja | 2,154 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb69-78f3-b0b2-768d398fae9b | 「何をそんなに怒っているんだ、剣也」
もぐもぐとレイナが作ったチョコレートケーキを食べまくるロード。
遠慮というものを知らないな、これが皇族か。 殴ってもいいか?
「いや、これほんとに美味しいな。私はぶどうの次にチョコが好きなんだ。ほら、脳を使うから糖分がね」
「そ、それはよかったです。ロード様」
「こいつに様なんてつけなくていいだろ」
「これでも主君なんだけどな、主従関係はどこに……レイナ君、なにかいってやってくれ」
「剣也君、続きはまた今度してあげますから……ね?」
レイナが剣也に笑顔で微笑む。
「まじですか!」
「なんだ、いかがわしいことでもしていたのか、それはすまなかった。ちゃんと避妊はしろよ」
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019c973d-bb6b-76e4-9937-ed774eedcbc4 | 「おはよう、世界。いや、違うな、おはようとは、起きた時に言う言葉だ。ならば一睡もせずに起きた時。人はなんというんだろう」
朝チュンだと思った?
残念、徹夜チュンです。
理性は死んだけど、なんとか本能も道連れにすることには成功しました、3回ぐらい復活してきたけど。
まるでゾンビだな、若い性欲とは恐ろしい。
途中でトイレにいって精神統一、もとい賢者にジョブチェンジを繰り返して何とかこの窮地を乗り切ることに成功した。
「おはようございます……よく寝ました。なんででしょう、剣也君の隣は安心しますね」
(うん、俺は一睡もできなかったけどね)
レイナは安心して熟睡したようだ、寝ぐせがついているのが可愛い。
それに、昨日は夜だった... | ja | 2,309 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb6d-75ac-b94c-96d1914ce988 | 第99代オルゴール・アースガルズ。
世界の支配者が口を開いた、拡声器と皇室放送の中継によって国中にその声は届けられる。
もちろん、その声は文字通り世界中に。
「皆よ、聞け。私はもう長くはない。だから選ばなくてはならない、次期皇帝を……」
その声は、既に力がなく死に体であることが声を聞くだけでもわかるほど弱弱しい。
立つことすらままならないのだろう。
「父上!?」
その声を聞いて焦るオーディン。
皇室放送を牛耳っているオーディンはオルゴールが迂闊な発言をしないようにメディアには出さないようにしていた。
しかし、今日はロードの叙任式。
放送しないわけにはいかなかった。
それを狙い撃ったロードの策略、生放送で世界に届... | ja | 2,938 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb70-7eec-b5d5-80316f1e0ba0 | 「兄上! これはどういうことですか!」
「なんだ、ロード。早かったな」
「これは何だと聞いているのです!」
帝都ヴァルハラにある軍事基地。
ここは、軍事を司る最高位の軍人達が働く場所。
その総司令室、つまりオーディンの部屋。
そこへロードが怒鳴り込み、机に令状を叩きつける。
「この令状はなんですか!」
「なにって、軍紀違反を犯したソード君に事情を聞いているだけだが?」
「あの件は、私の命令だったで決着がついたでしょう!」
「了承した覚えはないが? それとも書面でもあるのか?」
「そうですか……そういうことですか。しかしあれは、私の命令です!」
「それではなぜあの場でソード君はそう主張しなかった? あれほどの被... | ja | 1,958 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb72-7dfa-a558-ec0e20618647 | 「なに!? 御剣が異端審問会にかけられているだと!?」
レイナは、ロードに報告後ジークにも連絡を取っていた。
通信を用いてジークにもこの内容を告げるべきとレイナは判断する。
「わかった……こちらでも何かできないか探ってみる」
「はい、お願いします。パパ」
そして通信は終了した。
「ジークさん、異端審問会とは?」
そしてその隣にいた田中一誠。
今はジークは建御雷神の調整や、試運転を含めて田中が潜伏する研究所へ来ていた。
「あぁ、異端審問会とは長らく開かれていなかったが戦時中はよくやっていたんだ」
「EUとのですか?」
「あぁ、それだけではない。古くは剣で、銃で戦っていた時代からある古い組織だ。目的は」
異端... | ja | 3,984 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb77-7e1d-a684-b6c7f2351013 | 「どうだ? キャサリン。様子は」
「いい感じに仕上がっておりますよ! ギリギリの体力の調整しますのでお任せを! 帝国剣武祭で死ぬことになるでしょうが」
「そうかそうか、よくやったぞ。キャサリン。あいつも仕事しているようだしな」
オーディンに報告するキャサリン。
そしてオーディンは窓から外を眺める。
帝都は今やお祭り騒ぎ。
毎年の帝国剣武祭はKOGの祭典として大賑わいだが、今年はさらに多くの賑わいを見せる。
アースガルズ中から貴族をはじめ多くの観光客が押し寄せる。
時代が変わる場面を見るために。
「いよいよ、明日だな。ロードも明日には帰ってくるらしい。さすがは我が弟。あの戦場を本当に一週間で制してみせたよ」
「... | ja | 3,611 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb7b-77a2-8e8c-17a3ff342df8 | 開始のゴングと、宣言が会場に響く。
しかし歓声は上がらない。
全員が固唾をのんで、静かに見つめる先には、二つのKOG。
剣也とオシリス、頂点に立つ者を決めるために。
先に剣を構えたのはオシリス。
「では……」
そして戦いは始まった。
世界の運命を決める一戦が。
「いくぞ! ソード!」
繰り出すのは突き、オシリスの最も得意な技。
その鋭き突きは並みの物、いや聖騎士長クラスですら一撃で屠るほどの鋭さを持つ。
遠目で見ている観客達ですらそのまるで弾丸のような勢いの突撃に、受け止めることなど想像できない。
目を閉じて剣也の敗北を悟る者も多かった。
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019c973d-bb7d-7917-8a8e-041867857afb | 「どうして……どうして……戦うの」
少女は一人泣いていた。
地面に座り込み、二人が見えなくなってもずっと泣いていた。
「命を懸けて……なんで……自分の命を捨ててまで何のために……」
なぜ少年は、戦うのか。
なぜあんな体で、戦うのか。
立っていることだって辛いはず、目を開けているだけで辛いはず。
なのに、なぜ戦うの?
相手は帝国最強の騎士なのに。
あの雲の上の強さの父よりも強く、歴代最強の騎士、剣聖と呼ばれる存在なのに。
そんな相手と歩くことすらままならない体で戦えば、死ぬことは明らかだった。
剣也が死ぬところを見るなんてレイナにはできなかった。
だからどうしても立ち上がれなかった。
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019c973d-bb82-702d-9770-3ccf89a090e1 | 「ロード様、オーディンが逃げていきますがよろしいのですか? 今でしたら」
帝国剣武祭が終わってすぐ、部下がロードに進言する。
今ならオーディンを倒せるのではと。
そのために、これほどの戦力を闘技場の外に待機させたのではないのかと。
皇帝になる前のロードが動かせる数少ない軍事力が闘技場近くに集合していた。
それでも少なくない数のはず。
「いや、いい。向かってこないならば。最悪なのは今この瞬間に戦争が起こることだ。内心ひやひやしたが、兄上が自暴自棄にならなくてよかったよ」
そのロードの進言通りに待機する部下達、しかしこの絶好の機会を逃す理由がわからない。
しかしすぐにわかることになる。
「あれは……」
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019c973d-bb84-759b-a528-465e765a8184 | 「さぁ、始めましょう! 世界連合の結成へ向けて!」
そしてカミール含め、EUの代表団が次々と挨拶と合わせて握手をする。
他にも多くの各国代表がいるが、数は100人近くにもなるので隣の大会議室で待機する。
ここには、EU側のトップとしてカミール、アジア連合側のトップとして玄武が机をはさんで対面する。
「改めまして、よろしくお願いします。私はカミール、私の言葉がEUの言葉と受け取ってもらって結構。今は一刻も時間が惜しいですから」
急かすように自己紹介は手短にすませるカミール。
年は40後半の眼鏡の男、EUの政治のトップを担う外交官で、有能な男だった。
「そうですな、時間がない。一週間ですからな、あの国に付け入るスキがある... | ja | 3,176 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb8b-7e66-81ec-64dc49449fef | 「きたか、すさまじい数だな……ロード様に報告はいっているだろうが、援軍はしばらく望めん」
ジーク・シルフィードは前線に立つ。
彼は引退した身、本来ならば自ら戦場にいくことはない。
しかし日本を預かる身として、攻撃されようとしている今はそんなことを言っている場合ではない。
それに。
「この作戦が失敗に終われば戦争は終わる」
敵戦力はこちらの数倍近い大部隊。
防衛戦とはいえ、いずれ押し切られる戦力差。
それでも援軍を考えれば三日耐えれば可能性はあった。
「避難は、まだ済んでいない。本国からの援軍もいずれ到着する。お前達3日は持たせるぞ」
「耐えてみせます、多分死ぬことになるでしょうけどね」
「よく言った。頼りにし... | ja | 2,716 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb8d-7544-9eb5-e1d999a707b5 | 時は少し戻り日本防衛戦 三日目 朝日が昇る前。
「知らない天井だ」
人生で一度は行ってみたい言葉を、正しいシチュエーションで言えた少年は目を覚ます。
「おはよう、剣也君」
「田中さん!」
「体調はどうだい? 結構な薬漬けにされてたが…。肺炎になっていたから無理はしないようにね」
そして剣也はあたりを見渡す。
ここは医務室、しかも個室でめちゃくちゃ豪華。
きっと貴族とかが使うようなんだろう、ロードが奮発してくれたのかな?
「胃がちょっとムカムカしますし、頭痛しますけど体調はいいです!」
「はは、まる三日近く寝ていたからね、帝国剣武祭が終わってからもう三日だよ」
「そ、そんなに……何から聞いたらいいんでしょう。世... | ja | 2,531 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb92-7d99-85c2-049736c70025 | 「剣也君、聞こえるかい?」
「はい!」
ここは海の上。
アースガルズから日本へは飛行船なら半日ほど。
しかし、建御雷神なら、田中が改造した建御雷神の速度なら2,3時間ほどで到着する。
その速度は、音速を超える。
槍のような形で飛ぶ建御雷神の飛翔フォルム。
両手の剣を盾のようにしたときの応用で、長距離音速飛行を可能にした。
「残念ながらエネルギーの余裕はない。往復を考えるとそちらでの稼働時間は1~2時間。その間に決着をつけて帰ってきてくれ」
「……わかりました」
「それとオープンチャットは使わないように、君が日本人だとバレる場合がある。わかるね?」
「……了解です」
帝国剣武祭から一切の補給を行っていない建御... | ja | 3,287 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb96-70f0-b1bc-30d8ae3b5e78 | 「そうか……間に合わなかったか」
アースガルズ、首都ヴァルハラ
総司令本部でロードに報告が入る。
日本への援軍の準備が完了した時だった。
日本の駐在軍の敗北、そして撤退との報告。
元々奇襲であったこと、圧倒的戦力差であったこと。
あらゆる条件が悪すぎた、せめてロードが指揮を執れれば、兵力が残っていれば、剣也があと数時間早く目が覚めれば。
しかしそれは叶わない。
今軍の再編成は何よりも優先しなければならない事だとロードはこの先の未来を見据えて対応していたから。
「はい、ジーク・シルフィードは……戦死いたしました、最後まで……前線で戦い続けたと」
「……そうか、報告ご苦労。少し休もう、全員よく頑張ってくれた。皆の... | ja | 2,255 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb9b-74e2-8c25-50699950ef4f | 「いきなりなんだ半年もふらふらしよって。しばらく休むと言って、軍を飛び出したかと思ったら急にお願いとはな」
ジーク・シルフィードは上官に頼み込む。
「お願いします。日本の駐在軍の管理を私にやらせてください」
「……そうか。わかった、私から推薦しておこう。幸いお前は聖騎士長、実績も十分だし問題ないだろう。誰もなりたがらないしな」
「ありがとうございます」
「会えたのか」
「いえ。……それと今日をもってKOGの騎士を引退いたします。聖騎士長の資格も返上いたします」
「はぁ……わかった。しばし休め。皇帝陛下があれでは、当分戦争はないだろうしな。ご苦労だった」
そしてジークは日本の駐在軍のトップとして日本の復興に尽力する... | ja | 2,639 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bb9d-78c8-b90a-46ddc1771905 | (お兄ちゃん、やっとお墓参りができるよ)
日本を奪還した世界連合。
かぐやは真っ先に墓参りに行くことにした。
一心は忙しいため後日ということになったので今日は一人車でやってきた。
「剣也のも作ってあげないとね。黒神家の横につくってもいいかな……」
少女は悲しそうに、一凛の花を持つ。
花屋もない今ではこんな花しか飾ってあげられないことが少し心苦しい。
それでもたった一凛だけど……日本を取り返したことを知らせたい。
まだ何も終わっていないけれど。
それでも一言伝えたい。
「あれ? 誰かいる?」
少女の視線の先。
二人の銀色の髪がいた。
臨戦態勢になるかぐや。
銀色とは、敵である可能性もある、もちろん日本人... | ja | 5,417 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bba0-7fff-8ea4-1f41a4704392 | ★すみません、予約投稿できてなかった
「じゃあ、時間もないし……今後の話を。それで? 剣也達の目的はなんなの?」
しばらく泣いた二人は落ち着いた。
座り込みゆっくりとかぐやが今後のことについて話し出す。
「ロードを皇帝にすること。そして戦争を終わらせる。あいつと約束したんだ。だから今この戦争は止められるはずなんだ」
「……ロード? アースガルズの皇帝よね。全然信じられないけど。でも……仮に本当だとしてもそれは無理ね」
「え? どうして」
「皇帝が全ての植民地を解放して武力を放棄するなら可能かも、でもそんなことはできない。世界中にばらまいた憎しみはもう止まらないわよ」
アースガルズの大部分は占領した土地。
そして国力... | ja | 2,577 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bba6-717b-93d7-20c09499365e | 時は少し遡る。
「玄武さん! 本当ですか! オーディンと手を組むというのは!」
玄武のもとに、カミールが現れる。
まだ玄武の独断で決めただけ、しかし玄武が決定するということは、中武、そしてアジア連合の決定となる。
ならばEUも相応の理由がなければ断れない。
「はい、とりあえずお座りください。説明しましょう。それに…もうすぐ来る頃です」
「くる? まさか」
「はい、きますよ。その同盟相手が、今日ここに」
その細い目がカミールを見つめて目を開く。
…
巨大な円卓を囲み三人の代表が座る。
それを囲むように多くの各国代表や、軍人達も。
和やかな雰囲気などではない。
なぜなら目の前には世界の敵になりえた存在が座って... | ja | 2,133 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbad-7600-b486-fa187bc1304d | 「なぜだ!」
世界連合総司令本部。
そこで玄武は声を上げる。
世界大戦がはじまって一週間近くが経過していた。
「戦力差は3倍とは言わんでも、2倍に近いはずだぞ。なぜことごとく敗北していく!」
部下からの報告は、常に敗北の報告。
白蓮も、三英傑と戦っており戦場は手が離せない。
「……私達は見誤っていたのかもしれません。ロード・アースガルズという存在を。いや、もしかしたら成長しているのかも」
その横で報告を聞いていたカミールも額に手を当て考え込むように、空を仰ぐ。
かつてのEU大戦は戦力では向こうが上、ならば敗北も仕方ないと思っていた。
しかし今度はどうだろう、EU、アジア連合、そしてオーディンの力が合わさり戦力差は二倍... | ja | 1,806 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbaf-70c6-9828-c7f137eff962 | 「ついたか」
オーディンの航空艦、がヴァルハラを視界に入れる。
一万のKOGがロードを逃がさないように囲むようにヴァルハラを包囲する。
そして目の前には帝都ヴァルハラ。
巨大な建物がいくつも並び、その中心にはまるで古城のような巨大なヴァルハラ城。
まだ距離はあり、目視ではうっすらとしか見ることはできなかった。
「どうだ? リールベルト」
「まだ部屋にこもって指揮を執っているとのことです。ではオーディン様ご命令を」
「あぁ、神の雷。機動準備」
「了解しました!」
そしてエネルギーが充填され始める。
と同時に、通信がオーディンへと向けられる。
アースガルズ軍全員に向けた放送を浮遊航空艦ゼウスは受け取った。
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019c973d-bbb1-70ce-a711-d57385050fba | 時は少し戻る。
「剣也、お前はヴァルハラ城のできるだけ上空で滞空していてくれ。私が合図を送る。合図とともに、そのまま一直線に玉座の間に降りてきて……兄上を」
「わかった。大丈夫だ」
「……あぁ」
ロードの作戦は、単純だった。
オーディンをおびき出し、剣也に倒させる。
しかし慎重なオーディンをあぶりだすことは難しい。
「兄上は、いつも勝利を確信してからでなければ現れない。いつだって安全なところで戦っている。だから私は全兵力を戦場に出す。これは本当にだ」
「そんなことをしたら……」
「あぁ、私の周りには守る戦力はいなくなる。兄上もアースガルズの戦力はすべて把握しているし、こればかりは欺く方法はない」
「そして私は... | ja | 2,692 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbb6-78e4-be96-5fa9e08bed26 | ロードが剣也を捕まえて、世界に向けて演説をする少し前。
アースガルズ大病院。
その一室で一人の男が、多くの管を体に通され半死の状態でただ天井を見つめていた。
かつて世界を支配しようとしたオルゴール・アースガルズ。
ロードの父であり、第99代皇帝。
今や病に侵されて、すでに往年の覇気はなく、ただ死を待つだけの存在。
「父上……兄上は死にました。そして今日始めます。すべてを」
ロードがその病室へとたった一人で訪れる。
「……そうか」
その男は自分の息子が死んだことに対してただ一言だけ告げて目を閉じる。
「……では失礼します」
そしてロードが頭を下げて病室を後にしようとしたとき。
オルゴールは話し出す。
「ロ... | ja | 2,855 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbbc-7fe6-81e5-8023bd00a32b | 「ソードはおとなしくしているか?」
「はい、ロード様。全く問題ないです、おとなしいぐらいで私としては自信を無くすほどです」
剣也の監視塔の世話を行っているメイドのソフィはロードに定時報告を通信していた。
レイナに逃げられ、建御雷神も奪われた。
それでも剣也さえ確保していれば何の問題もない。
それでもロードは守りを固める。
帝都中の戦力はすべて剣也を奪われないように使われる。
剣也を殺すという選択肢は確かにあった。
「そうか、できるだけ……不自由をさせないでやってくれ」
それでも殺せなかったのは、なぜ?
ロードは再度自分に問う。
でも答えは結局出なかった。
思考を遮るようにメイドが質問を行う。
「ロード様一... | ja | 2,151 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbbe-7267-b8c4-45fdef28989a | 「レイナは無事だろうか……」
剣也は隔離塔に一つだけある鉄格子の窓から一人空を見つめる。
もしレイナ並みの身体能力もあればこの塔からロッククライミングのように降りることもできるのだろうか。
「俺なら即死だな」
何メートルあるか分からないが、それでも落下したら一瞬で死ぬことだけは分かるほどに高い石の塔。
「なぁ、ソフィ。世界はどうなってるんだ? 少しぐらい」
「だめです」
「そうですよねー」
「大分私に対する警戒もなくなってきましたね。抱かれるのも近そうです」
「いや、しないよ!?」
「なぜですか? 私は容姿には優れていると自負しています、健全な男性ならば据え膳ものかと」
「自分で言うか……まぁ確かにソフィは綺... | ja | 2,183 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbc4-7bc1-bf39-9a8ef911f400 | 「オーディン様、私が弱かったばかりに申し訳ありませんでした」
オシリスは剣を構える。
アースガルズ軍をまるで阻むように。
◇オシリスとオーディンの過去
「はぁはぁ、9997! 9998! 9999!」
「お前はいっつも剣を振っているな、飽きないのか?」
「10000……? だれだ? ……オ、オーディン様!?」
若き日のオーディンとオシリス。
オシリスはまだ聖騎士ではなく、ただの一兵卒。
オーディンもまだロードと出会ってすらいない子供。
そんな二人の初めての出会いだった。
いつもと変わらずに訓練場でただ一人無心で剣を振るオシリス。
誰よりも早く来て誰よりも遅くまで、たった一人剣を振る。
愛する人を戦場で失っ... | ja | 2,554 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbc9-707e-8466-373fde3d76e3 | 少年は深いため息をついた。
自分の見立てが甘かったのだろうか。
親の仇、そして家族の仇である少女二人が手を組むなど想像していなかった。
「レイナ君とかぐや君。二人が協力することが、手をつなぐことができるとは……しかしなによりは」
そして何より想像できていなかったのは、目の前で倒れている騎士だった。
万の軍勢をたった一人受け持って、少年を逃がすように戦った。
オーディンの騎士である彼は自分の味方にはなってくれないとは思っていた。
しかしまさか敵になるとも思っていなかった。
きっと彼を動かしたのは。
「オシリス……当てられたのか。彼の熱に」
かつて剣の頂に立っていた騎士は、敵になった。
いや、正確に言えば味方に... | ja | 2,666 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbcb-7cbf-8c54-5489e57b34a7 | 「ちょ、ちょっと二人とも!?」
「ちょっとだけだから! 少し浸かるだけだから!」
「少し浸かるってなんだよ!」
「こ、ここまで来てごねるんじゃないわよ! 諦めなさい!」
「そうです、逃げられませんよ。この家に入った時点でもう決まっていたんです」
ノリノリのかぐやとレイナに引っ張られて剣也は風呂場へと連れていかれる。
この二人が本気を出せばKOGに乗っていない剣也など簡単に手籠めにされるだろう。
それはそれでエッチだなと反応してしまうのは仕方ない。
「これが乱暴される気分か……」
無理やり服を脱がされて風呂場に投げ込まれる。
下だけは、なんとか自分で脱ぐという主張は受け入れられてタオル一枚腰に巻き椅子に座る剣也。
「... | ja | 2,494 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbcd-779f-ac20-f58da876ff84 | 「おはよう、良く休めたか三人とも」
「はい!」
一心に呼ばれ養成学校へ。
そこには田中と一心が座っていた。
「それはよかった。私は徹夜で建御雷神の修理をしたからもう眠くて眠くて」
コーヒー片手に、目の下にクマを作っている研究員。
疲れている顔が良く似合う人だが、不名誉この上ないポスドクに感謝しかない。
「ありがとうございます、田中さん。これでいつでも戦える」
「私にはこれしかできないからね」
「では、始めようか」
そしてカメラが付き、映像が映し出される。
その向こう側には、世界連合の面々が映し出される。
「玄武さん、今日は忙しいなかお時間をありがとうございます」
「かまわんよ、しかし世界連合として足並みは揃... | ja | 2,854 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbd4-7e3e-9e18-1c196127a9dd | 「一体……何が起きた」
玄武含め、世界連合の面々がレイナ、かぐやに守られながら安全な場所へと移動した。
周りを見渡せば交戦したであろう、世界連合のKOGが全て瓦礫となっている。
交渉施設は崩れ、そして100を超える敵KOGはすべてたった一人のKOGを見据えていた。
こちらがあつめた戦力は、同数の100機。
そのどれもが正しく訓練を積んだ精鋭達、しかしアースガルズはその次元の話ではない。
毎年何千人とアースガルズの才能が集まるすべての養成学校、その頂点に立った十人ほどがなれる聖騎士。
そしてその聖騎士の中でも戦場を駆けて腕を極め、敵に畏怖と尊敬で呼ばれる存在。
それが聖騎士長、たった一人で戦況を変える存在。
その聖... | ja | 2,047 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbd6-7517-b380-75dd072761ac | 「レイナ、かぐや! その人たちは三英傑の!」
「大丈夫です、剣也君」
「ええ、私達あの日誓ったから」
「「守られるんじゃなくて、共に戦いたいって!」」
剣也の静止も構わずにレイナとかぐやは、それぞれが自分の相手を自覚する。
レイナはラミア、かぐやはオルグと一対一へと持ち込んだ。
そして他のすべてを。
「……わかったよ、じゃあ残り全部」
両手の剣を勢いよく振り切った。
剣の領域が世界を包む。
「俺が倒す」
風すら拭きそうなほどにプレッシャーが剣也を中心に放たれる。
「うわ、すご。剣也どんだけ強くなってんのよ」
「オシリスさんよりも遥かに……」
レイナとかぐやもその剣気とも呼べるプレッシャーに充てられた... | ja | 2,501 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbd9-7e65-bbee-79cd079971a1 | 「私はどうすればいいんだ」
ジン・ハルバードは戦場に来ていた。
聖騎士長以上の緊急招集、その命を受けて日本へ。
「お前を殺す作戦に、私は」
それでもジンは悩んでいた。
あの日父から言われたことを、いまだに悩み、自分の正義と戦っていた。
そして剣也とアースガルズの最後の戦闘が始まった。
「お前はやっぱりすごいよ」
目の前で神のごとき力で、すべてを切り伏せる剣也を見た。
覚悟をもって、意思をもって、絶対に譲れない正義をもって。
自分では到底持ちえないほどの揺るぎない鋼の意思と世界一の技術をもって。
アースガルズにたった一人立ち向かう。
自分にはできないようなことを、剣也はいつもやってきた。
ジンは憧れ... | ja | 3,472 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbdb-7cd2-9e49-0861f786f3fd | 「剣也君……」
一人部屋の隅で泣いている剣也。
レイナが慰めようと近づこうとする。
「レイナ……今はだめ」
しかしかぐやがその肩をもって、首を振る。
かぐやは知っている、レイナだって知っている。
今は少し整理する時間が必要だ、大切な人を失うとはそれほどまでに辛く苦しく出口の見えない暗闇の中なのだと。
本当に大切な物を失うとき、どんな言葉も通らない。
自分自身で立ち上がるしかないのだから。
「……落ち着いたら……ね」
「……はい」
そして二人は剣也を残して去っていった。
今日はロードの処刑の日。
剣也は何もできずただ目を赤くはらして天井を見つめていた。
ロードの言っていることもわかるし、世界はもうロー... | ja | 5,388 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbde-7c26-95dc-b00fd62b2009 | 「なんということだ……」
剣也が全てKOGを切り伏せて、ロードを連れてアースガルズへと飛び立った。
追従するようにかぐや、レイナも飛んでいく。
それを玄武は、世界はただ見つめることしかできなかった。
この日世界中が見守る中ロードの処刑は失敗に終わる。
たった一人、世界最強の騎士の手で、定められた運命は変わり、NEWルートが誕生した。
…
一月後。
「帰ったか、剣也。これで最後だな」
「あぁ、これですべて倒した。まったく、殺さずに全部倒せなんて無茶な命令だよ」
「お前にしかできない。それに虐殺はだめなんだろ? だがオーダー通りだ。よくやった」
「あぁ。じゃあ始めるか」
「あぁ、始めよう」
…
「玄武さん... | ja | 8,590 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbe0-7ed5-ae0f-0c5f4decfad0 | 「ロード様! またこんなに書類を散らかして!!」
「ん? あぁソフィ。おかえり、視察後苦労。書類は……すまない、そのままにしていてくれるか。すべて場所と内容は暗記しているんだ」
書類に埋もれるロード・アースガルズ。
その部屋は書類でいっぱいで、散乱している。
第二次世界大戦が終わり、世界騎士団ができてすでに15年近くが立っていた。
ソフィはあたりを見渡す。
すべて暗記しているなどにわかには信じられないが、この人ならやりかねないとも思った。
「はぁ、世界は平和になったのですからもう少し休まれては?」
「なに、この命最後まで捧げる。そういったのは私だからな、身を粉にして働かなくては」
「相変わらず忙しいですね」
「あ... | ja | 2,842 | ca4ee9bc-c131-4ff6-a2c3-f70e780b6731 | [
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019c973d-bbe5-71e0-96e6-86040c0da2a2 | トラックに轢かれた。
痛いと思った瞬間には、意識が途切れていて。
そして今、目の前に神様っぽい女の子がいる。
「こ、こんにちは……」
神(?)はどもった。
見た目12歳くらい。
頭に輪っか、背中に翼、白いローブに大きな木の杖――
あからさまなまでにゴッド・スタイルの少女だ。
しかし、心なしかおどおどしているようにも見える。
さらには、ぎこちなく笑ったまま黙り込んでしまった。
……人見知り?
「あの……神様ですか?」
「あ、は、はい。そうですすみません! 私が『光あれ』って言いました!」
神はカミングアウトした。
とりあえず、地上に生きる生命の一つとして、天地創造を悪いことのように言わないでほしい。
... | ja | 1,403 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bbe7-7fa2-b92d-fd59afb361c4 | 俺は、いつの間にかジャックと呼ばれていた。
ジャック。ジャック・リーバー。
それが、俺の名前だった。
俺は地方に領地を持つ伯爵家の第一子として生を受けたようだ。
両親は前世の俺と同じくらいか、下手すりゃ年下の若い夫婦で、どっちももの凄い美男美女。
その遺伝子を受け継ぐ俺自身のルックスにも期待が持てるってものだ。
そんな新しい自分を確認して思い出すのは、神様が言ったこと。
逃げ延びろ。
隠れろ。
やり過ごせ。
決して見つからないように。
あれは……きっと、応援だ。
今度こそ、あの妹の魔手から逃れ、幸せな人生を過ごせ、と……そう言ってくれたのだ。
せっかくもらえた、有り得ない二度目。
このチャンス... | ja | 2,191 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bbeb-783d-a9d5-663cb18e0113 | 「「「1歳の誕生日、おめでと―――――――――――っっっ!!!」」」
というわけで、1歳になった。
お誕生日席に座らされた俺を囲んで、両親や使用人たち総出でてんやわんやの大騒ぎ。もはや俺関係ねえだろってレベルだ。
「あっという間の1年だったが、いやはや、子供が成長するのは早いな」
「そうですね、あなた。掴まり立ちもできるようになりましたし、それに……」
「ああ、精霊術だ! 我が息子ながら末恐ろしいよ。単なる積み木遊びだけで、もう並の大人と同程度まで術を使いこなしている! 俺たちの息子は、やはり天才だ!」
などと父さんたちは言っているが、まあ正直、親の贔屓目がかなり入ってると思う。
この冗談みたいに豪華な誕生日会といい、... | ja | 1,480 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bbef-76e5-9e85-3196a7f40a7e | 俺は目を覚ます。
意識はすっかり鮮明になっていた。
……あれ……?
ここ、どこだ?
周りを見回しても、見覚えのある景色ではなかった。
散歩ルートはいつも同じはずなのに。
俺はアネリの顔を見上げる。
彼女はまだ歌っていた。
鼻歌ではなく、歌詞のある歌を。
「♪ せっせーせーのよいよいよい ♪」
「♪ このまままっすぐ もーりを抜ければ ♪」
「♪ わたしと兄さんの 桃源郷 ♪」
「♪ ラーンラランランランランランラン ♪」
「♪ ラーンラランランランランラン ♪」
「♪ ラーンラランランランランランラン ♪」
「♪ ランランランランラ…… ♪」
……は……?
これは、まだ……夢……?... | ja | 4,075 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bbf7-764f-8797-d57508632c36 | まるで手品を見ているようだった。
「もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐもぐもぐ」
手折れそうなほど華奢な身体に、大量の食物が次々と飲み込まれていく。
空の皿はもう10を超えた。メイドや執事が続々と料理を運び込んでいるが、彼女が食べるスピードのほうが速い。
俺たちが連れ帰ってきた女エルフの、恐るべき食べっぷりだった。
「……げふ。……ごちそうさまでした」
そう静かに告げたエルフの前には、結局、30もの皿が積み上がっていた。
女エルフの見た目年齢は15~6歳。体格もそれ相応なのに、どこにそんだけ入る容積があったんだ。
そのダボっとしたローブの下、実は力士なのか?
……いや、超細かったな。さっき潰されたときの感じだと。
... | ja | 4,804 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bbfc-7ea3-811e-837862483238 | 狼の強靭な足が、降り積もった枯れ葉を蹴散らしていく。
肌を刺す冷気を意識の外に追いやり、俺は跨った狼の筋肉の動きを感じた。
――今!
狼が急激に右に転進する。
だがその上に乗る俺は、その姿勢を微動だにさせなかった。
木々生い茂る森を、俺は狼と一体となって、縦横無尽に駆け抜けていく。
だが、それは不意に起こった。
ズズン! と、どこかから降ってきた大岩が、行く手を塞いだのだ。
避ける――のは間に合わない。
狼は曲がりきれず、そのまま大岩に激突した。
――瞬間。
俺は自分自身と狼の質量を消す。
それにより、激突の衝撃はゼロとなり、狼は岩に額をつけた状態でピタリと停止する。
大岩が行く手を塞いでから、... | ja | 9,175 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc01-731f-8e99-e29404d904f1 | 「出な」
盗賊『真紅の猫』の女頭領ヴィッキーは、程なくして再び現れた。
「頭領直々のお出迎えか。俺たち、実はVIPだったのか? スイートルームにしちゃあここは少々貧相に思えるが」
「イイね。今のうちに減らず口を叩いておきなクソガキ。一生で最後の機会だろうからね」
軽く煽ってみたが、今度は術を使ってこない。
……厄介だな。下っ端の男だけなら、そのまま伸して逃げることもできたかもしれなかったのに。
俺、フィル、ベニーは、牢屋の外に連れ出される。
牢屋の扉は、下っ端の男によって施錠された。
鉄格子の向こうで、残された子供たちが不安そうな顔をしている。
俺は盗賊たちに気取られないよう、そっと彼らに頷いた。
前をヴィ... | ja | 4,876 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc06-732e-8276-00ad3672b617 | 「チッ……ガキどもめ。ちょこまかちょこまかと……」
いい加減、アタシは辟易していた。
このアタシが――盗賊団『真紅の猫』が頭領『血まみれ雌豹』ことヴィッキー様が、あんなガキごときにこんなに手間をかけなきゃならないなんて。
もしこのまま逃げられるなんてことになれば大損だ。
『彼女』との取引は明朝。
それまでにとっ捕まえて、『加工』を済ませなきゃあならない。
こりゃあ今夜は徹夜になりそうだ。
イライラするねえ……。ああ、イライラする。
村の一つも潰してやらないと、このストレスは解消できそうにない。
あるいは――
ああ、そうだ、いいことを考えた。
前に、ずいぶんと目鼻立ちの整った王子様がいるって聞いたことがある... | ja | 5,868 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc08-71a5-bf98-53440c61743b | 体調は最悪だ。
痛いし、力入らないし、とにかく気持ち悪い。
今すぐにでも吐き散らかしたい。
けど、それをぐっと呑み込んで。
俺は、剣を握り締める。
現実的なことを言えば、フィルを連れてとっとと逃げてしまえばいい。
だが、この女盗賊はそれを許してくれるだろうか?
……無理だろうな。
手段があるとかないとかじゃなく、こいつは絶対、それを許さない。
俺を殺すこと。
俺を排除すること。
それが自分の人生を幸せに変える唯一の手段だと、心から信じ切っているような目で、俺を見ているんだから。
きっと――
俺も、妹を殺すとき、あんな目をしていた。
だから殺し合いだ。
生きるか死ぬかだ。
これは、俺にとって... | ja | 7,097 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc08-7190-8795-9764e4f1b2d8 |
さあ、悪い虫を払いましょう。
| ja | 47 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc0a-797d-962c-33fb01631954 | その男は、廃砦の崩れかけた屋根に伏せ、タイミングを見計らっていた。
ローブを着た少女が身を離した、その瞬間。
ジャック・リーバーまで、射線が通る。
男が引き絞った弓弦を解き放つのに、一瞬もいらなかった。
◆◆◆―――――――◆◆◆―――――――◆◆◆
それが目に入ったのは、たぶん、偶然だ。
屋根の上に人影があり。
その人影が、弓らしきものを持っていて。
そして今まさに――俺に向けて、矢を放った。
気付いたのは俺だけじゃない。
フィルも、ラケルも。
一瞬にして理解した。
今から、およそ0.3秒後。
俺が矢に射貫かれて、絶命することを。
だから――
彼女たちとしては、咄嗟の判断だったんだ... | ja | 1,171 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc0d-7f34-8230-ca1c59ec152c | 盗賊団『真紅の猫』壊滅から1年が経った頃。
春が訪れつつあるダイムクルドのリーバー伯爵邸に、王都からの使者が訪れた。
「……ジャックを、学院に……ですか」
「ええ、是非に」
応接間にて、当主カラム・リーバーに相対しているのは、王立精霊術学院よりの使者である。
俗に、スカウト、とも言う。
「道中、方々でお噂を聞かせていただきました。ご子息は、流浪のエルフに師事し、本格的な精霊術の修行を初めてわずか4ヶ月ほどで、あの『真紅の猫』を壊滅に追いやるほどの実力をつけたとか」
「いえ……あまりに過大に評価されるのは息子のためにもなりませんので訂正させていただきますが、息子が破ったのは飽くまで頭領である『血まみれ雌豹』のみです。『... | ja | 3,192 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc0f-769b-8c20-fdad90a87f39 | 王都レイナーディアは、指輪教の総本山として栄えた街だ。
教皇が住まう聖ノモラス大霊拝堂と、国王が住まうレイナーディア城を中心に、塵一つ落ちていない石畳の街並みが広がる。
塵一つ落ちていないのは、親なしの子供が拾って金にしているからだ。
だからレイナーディアを訪れたときは、ゴミをポイ捨てしている人間を見ても注意してはいけない。
彼らは、恵まれない子供らに仕事を与えているのだ。
――というような通り一遍の知識が、俺の頭の中にはすでに存在した。
だが、古人はよく言ったものだ。
『百聞は一見に如かず』。
「ふわー! 人がいっぱーい!」
「おお……!」
馬車の窓際で大興奮を見せるフィルの後ろから、俺はこっそりと声を漏ら... | ja | 6,167 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc13-70e0-a70d-3f2c8d3c42de | 「快勝だわ!」
私は上機嫌だった。
王立精霊術学院、戦闘科3級テスト――
一門の先輩がたからは耳にタコができるくらい脅されたけれど、終わってみればなんてことはないわ。
一身に視線を集める快感――
遠慮なく実力を振るえる解放感――
むしろ楽しかったくらいだもの。
きっと誰もがその目に焼き付けたはずだわ。
アゼレア・オースティンという稀代の精霊術師の姿をね!
さて……あとは高見の見物といきましょうか。
この私と同じ世代に生まれてしまった不幸な子たちの顔を、じっくりとね。
『第二試験場! ジャック・リーバー! 受験級位は――え』
「あら?」
聞き覚えのある名前が聞こえてきたわ。
ジャック・リーバー…... | ja | 6,062 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc16-7fa3-8365-1f3d0fab5af1 | 妹が小学校に入学したとき、彼女はいやにテンションが高かった。
『お~、かわゆいのう、かわゆいのう』
『あ、あぅ……。や、やめて、××お姉ちゃん……』
『よいではないかよいではないか』
今日は時代劇か、もしくはそのパロディをしたバラエティ番組に影響を受けているらしい。
赤いランドセルを背負った妹に、彼女はべたべたとくっついていた。
『お、お兄ちゃん、助けて~』
……仕方ないな。
妹が半ベソをかいて助けを求めるので、俺は苦笑しながら彼女を羽交い締めにする。
『むむっ! 何をする! 曲者だ、出会え出会えー!』
曲者はお前だ。
一体全体、今日はどうしたんだこいつ。
テンションが高いのはいつものことだが、今日はカク... | ja | 6,967 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc1b-7778-a4cf-48bd0f2f9de8 | 第四闘術場には大勢の観客が詰めかけていた。
だが実力試験のときとは違い、それらは全員学院関係者。
来賓の客は一人もいない。
俺たちはその最前列にいた。
ルビーとガウェインを除く戦闘科Sクラス3人とフィル、そして副担任であるラケルの5人だ。
「まさか、1回戦からクラスメイト同士で当たるなんて……」
「リーグ戦だからね。いつかは当たってしまうのはしょうがない」
アゼレアの呟きに、エルヴィスが返した。
これからルビーとガウェインの試合が始まるのだ。
俺たちはラケルに召集され、授業の一環としてそれを観戦することになった。
「……それにしても、新入生の試合の割には観客が多くないか?」
俺は会場を見回して言う。
試... | ja | 6,121 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc1f-7195-b452-5dda53577e6f | 「何が欲しいんだ?」
俺はルビーに付き合って座ることはなく、そのままの距離を保って尋ねた。
すでにこの場のイニシアチブは彼女にある。これ以上、彼女のペースに乗るには避けたかったのだ。
「それを言う前に、先に確認させてほしいね。あたしの取引に応じる気が、ほんの少しでも、あんたにあるのかどうか――つまり、あんたが本当に、王子の精霊術の痕跡を調べたがっているのかどうかをさ」
……慎重なことだ。
ガウェインに負けたのが相当堪えたんだろうな。
それにしたって、たった半日でここまで意識を切り替えられるのは、間違いなく才能だ。
「……お前の出す条件による。エルヴィスの精霊術を調べているのは確かだ」
「オーケー。信じてやるよ」
... | ja | 4,105 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc23-7809-8ae0-5e162c5e4bd9 | 「失礼します」
儂が学院長室の座り心地のいい椅子でうとうとしておると、控えめなノックのあとに、ラケルが入ってきた。
「うおおっ!? ……おおう。なんじゃ、ラケルか」
「……誰と勘違いしたんですか?」
「いやなに、気にせんでもよい」
「クライヴさんなら先ほど職員室で見かけましたけど」
なんじゃ、わかっておるではないか。
あやつは居眠りに厳しいからのう。
「授業計画書を提出しに来ました」
「おお、その辺に置いといてくれ。そのうち読んでおく」
「……できれば早く読んでほしいんですが」
「わーかっとるって」
まるで仕事を塩漬けにする常習犯みたいに言いおってからに。
1ヶ月や2ヶ月、大差ないじゃろ。
そう思ってぐでーっと... | ja | 3,728 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc27-7943-b588-34e2da40f942 | 『――さあ! お待たせ致しました! クリーズ霊王も何とか復活されましたので、放送を再開します!』
『儂は正直もう帰って寝たい』
『そんなこと言わないで! ここまで全勝のスーパールーキー、エルヴィス=クンツ・ウィンザー2級とジャック・リーバー2級の対戦ですが、本試合の見所はどこでしょうか!?』
『ん~? そうじゃなあ……。やはりリーバーが【争乱の王権】に対してどんな対策を打ってくるかじゃろうなあ』
『【争乱の王権】と言うと、ウィンザー2級――〈傍観する騒乱のパイモン〉の精霊術ですね?』
『そうじゃ。〈パイモン〉っちゅう精霊は特殊でのう。分霊がおらん上に、王族にしか宿らんのじゃ。ただし、その精霊術の強力さは折り紙付き。プロの精... | ja | 4,245 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ!!!
……という、『王眼』をして擬音でしか形容できないノイズが、ぼくの頭の中をかき乱していた。
――なんっ……だ、これ!
膨大なノイズをかき分けて、ジャック君の動きを何とか捉え続ける。
けど――っくそ! ダメだ……!
探しても探しても、彼の情報がノイズの海に呑まれてしまう……!
なんなんだ、このノイズは……。
観客の声の比じゃない。こんな爆音がそこら中に響いているって言うのに、みんな気にならないのか!?
まさか――聞こえてない?
この音は、ぼくにしか……『王眼』しか感知していな... | ja | 4,184 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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「宴じゃ宴じゃ! あんな面白い試合を見たあとに呑まずにいられるか!!」
という学院長の宣言により、その日の夜、学院中が宴会モードに突入した。
呑気にしていられるのは最後とはなんだったのか。
「おっつかれ~~~~っ!! やったなあジャックおい!!」
「じーくんやったーっっ!!!」
「おぼっ!? フィル顔!! 顔に抱き着くのはやめろ!! っつーか痛い痛い! 背中痛い!!」
ルビーは背中をばっしんばっしん叩いてくるし、フィルはまったく離れようとしないし、激戦を潜り抜けた人間を労わろうという気はないのかこいつら。
「いや~さすがだよなあたし! まさかあたしが教えたテクが決め手になるとはなあ!」
「違うよー! わたしの猫さんの... | ja | 4,354 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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019c973d-bc30-7a36-bb21-8d9bef805e93 | 『×ーくん、最近つれないねえ』
学校の手洗い場で蛇口を上にして水を飲んでいると、いつの間にか隣にいた彼女がつまらなそうに言った。
俺は腕で口を拭いながら、
『……だって、変だろ。女子とばっかり遊んでるってのも』
『らしいねー。わたしはよくわかんないけど』
小学校も高学年になると、一丁前にしがらみってやつが生まれてくる。
特に、男子と女子に明確に線を引こうとする風潮が根強い。
男子の中に、女子と遊ぶ奴なんて軟弱者だという空気がなんとなくあるのだ。
そうでなくとも、女子と仲のいい男子はからかわれる。
それが気分悪くて、俺は少しだけ、幼なじみと距離を取っていた。
『周りの言うことなんて気にしちゃダメだよ。なーんにも... | ja | 4,496 | 6a5a3651-93f7-475a-a63f-4381b6908974 | [
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